心を育てる読み聞かせ術~第2回清水千秋さん(1)/絵本選びに迷ったら?

同じ絵本を何度読み聞かせても、そのたびに心の底から楽しんでいる子どもたち。絵本から夢中でなにかを吸収している姿は、いとおしいものですが、その一方で、保育士としては新しい作品に出会わせて、もっと世界を広げてあげたいと思いますよね。

そこで今回は、子ども向けの絵本を専門に扱う私立の図書館を訪問。絵本を選ぶ時のコツを解説していただきました!

企画・取材/乾 夕美
監修/東京子ども図書館

清水千秋(しみず・ちあき)さん

大学図書館勤務を経て、2002年より、東京都中野区にある公益財団法人・東京子ども図書館職員となる。現在、同館事務局長。児童室や分室のかつら文庫の担当のほか、子どもの読書にかかわる講演講師等を務める。

★ 東京子ども図書館 ★

1950年代より、家庭文庫がもとになってはじまった、私立の図書館。児童室、資料室があり、出版、講習会等の活動もしている。子ども向けの本は約8000冊。「おはなしのじかん」や「わらべうたの会」もあり、子どもたちの笑顔が集まる場として親しまれている。http://www.tcl.or.jp

すすめは、時代を超えたロングセラー絵本

なんと日本では、年間3,000冊から4,000冊もの新刊の児童書が出版されていると言われています。この中から、目の前にいる子どもたちに薦めたい絵本を選び出すのは、簡単なことではありません。それだけ、保育士の先生方が何を選ぶかが、大切になってきます。
メディア等で話題になったような絵本は、書店等でも、目立つ場所に置かれているので、放っておいても親御さんや子どもの目につくと思います。

そんなことも踏まえて、お薦めしたいのは、ずっと読み継がれているロングセラーの絵本です。実際、私たちの図書館で開くお話会で、子どもたちが集中して聞き入るのは、初版から30~40年以上経つような、長く読み継がれてきた絵本。凝った仕掛けやてらいのない、挿絵と文の構成。それこそ、私たち世代が子供の頃に読んでもらったようなお話なんです。

意外に思われるかもしれませんが、自分で読み聞かせをしていても、子どもたちを惹きつける力が大きいことを感じます。

のある絵本なら、現代っ子にもきちんと届きます

それでは、なぜ、ロングセラーの絵本が子どもを惹きつけるのかといえば、それだけ長い間、多くの子どもたちに支持されるような強い生命力を持っているからだと思います。
時の試練を耐えぬいたその生命力は、どこから来るのかというと、明快で起伏のあるストーリーや、わかりやすい言葉、ぴったりと読者と寄り添える魅力的な主人公が多いことも特徴ではないでしょうか。

本のブックリストを活用してください

日々の仕事に追われる中、新しい絵本を選び出す作業まで手が回らないこともありますよね。
そんな保育士さんは〝ブックリスト〟の助けを借りるのも一策ですよ。
ブックリストとは、お薦め本のリストをまとめたもの。今はインターネット書店などを利用すれば、近所では扱っていない絵本も上手に手に入れられるので、信頼できる団体が発行しているブックリストを活用してみてはいかがでしょうか。
リストに載っているようなロングセラーの絵本を数多く読むことで、自分自身の糧になり、良い絵本を選ぶ目が養われていくと思いますよ。

み聞かせが届けるもの

絵本を読んでもらうことは、子どもたちにとって、ただ新しいお話を聞くだけの時間ではありません。耳に心地よく響く肉声、その場に集う子どもたちの笑い声やゆったりとした空気の流れ。そういったものが心の奥深くにしっかりと残っていく、貴重な体験になると思います。
生まれた時からデジタル機器が周りにあり、無数の動画やゲームなどが簡単に手に入る時代だからこそ、絵本がもたらす想像の世界や人の温かさをしっかりと伝えていきたいと思いますね。

★こちらの本は全国の書店で注文するか、東京子ども図書館で直接購入できます。お問い合わせは東京子ども図書館まで

「今、この本を子どもの手に」
東京子ども図書館・編
1,080円(税込)

書店で手に入る児童書の中から、簡潔な内容紹介と対象年齢と共に1000冊を収録。絵本のほか、物語、昔話、伝記、図鑑、科学読み物などジャンルも幅広い。基本になる最初のブックリストとしておススメ。

「絵本の庭へ」
東京子ども図書館・編
3,888円(税込)

戦後出版された絵本から、次世代に伝えたい1157冊を厳選。季節や登場人物など、様々なテーマからの索引付き。読み聞かせに向く本にはマークも。児童文学事典のように使えて便利な一冊。

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