一度壊れてしまったから分かる保育士のストレスとケアの大切さ

Profile ゆきせんせい

現役保育士。元は一般事務員だったが、3人の息子が大きくなったのを機に一念発起、資格を取り、保育士として働き始める。毎日、保育園の子どもたちからは元気を一杯もらって、保護者のパパやママたちには子育ての先輩としてエールを送っている。

 

 

先日、厚生労働省の調査で全国の保育所・認定子ども園での驚くべき現状が明らかになりました。

それは、なんと3割の保育園で、精神的ケアが必要な保育士がいるという、衝撃的な内容でした。

でも

・子どもの生命と安全を守るために日々神経をとがらせている保育士
・圧倒的に女性の多い職場での人間関係に悩む保育士
・保護者などとの人間関係に苦慮する保育士

など、保育士は、解決しがたい悩みが多いのに、笑顔で対応することを要求される「感情労働」です。
そんな保育士に心のケアが必要というのは、当然のことだとも思えます。

実は私も以前、不眠や摂食障害などに悩まされた経験があります。
比較的のんきな性格の私が、そんなことになるなんて想像もできませんでしたが、ストレスフルな状況は、こんな私でも精神的に病んでしまうことがあるのだと痛感しました。

うつ病など心の健康を害するのにはいくつかの要因があるそうです。

保育士が心を壊してしまう原因

1)睡眠不足

睡眠不足は鬱病になりやすい傾向があるそうです。ストレスから寝られなくなり、寝られないことでさらにストレスをためる…といった悪循環でリスクは雪だるま式に増えていきます。
忙しく残業や持ち帰り仕事の多い保育士には、睡眠不足になりやすい環境といえます。

2)食事の偏り

とくに動物性の食品に多く含まれるトリプトファンはセロトニンの材料になります。
セロトニンは精神の安定に重要な物質ですので、食事が偏ると心の健康を害することがあります。特にダイエットを気にして動物性の食品を控える傾向にある女性は要注意。女性の多い保育士にはリスクが十分あると言えます。

3)完璧主義

本来私は、ずぼらですし完璧主義には程遠い性格です。
しかし、保育士の仕事はどうも「できていないことを指摘」されることが多いように感じます。

たとえば保育士は、保育園内の掃除を自分たちで行うことが多いです。
毎日の業務の合間にすることになっていますが、そんな時間はないので、時間外に各所の掃除をするのです。
ある日、窓掃除をした時に、角度を変えた時に白い跡が残らないように吹きあげるように注意されたことがあります。
もちろん私の仕事が保育士ではなく掃除をすることだけであれば、より綺麗になるように指示されるのは理解できます。しかし、保育士が業務時間外に掃除をしている時にこういう指摘をされると、反感を感じてしまいます。

他のある日は、洗面室の掃除をしたのですが、翌日洗濯機の下の排水パンの汚れまで指摘されました。大掃除ならともかく、一般的に排水パンの汚れまでふき上げるような掃除をするものなのでしょうか。
とにかく、できていないところを見つけて注意されるのだと言うのがとてもストレスを感じました。
掃除だけではありません。保育中には子どもが何十人もいる部屋で誰かが転ぼうものなら、なぜ見ていなかったのかと言われます。
注意されないようにと思うと、常に気を張っていて完璧にしなくてはと気ばかり焦ってしまいます。
結果的に、うまくできない自分を許せない完璧主義になってしまうのです。

注意されれば、次は気をつけようと思いますが、気をつけることがたくさん、仕事もたくさん、もう、自分のキャパシティをオーバーしているなと感じることもよくあります。
しかも勤務時間に休めることはほぼありません。業務時間+休憩時間で最低でも9時間ぶっ続けの労働です。食事の時間ですら、子どもの食事介助などがあり、保育士は仕事ですからゆっくり食べることはありません。

私の経験

さて私の場合、睡眠や摂食の障害を気にしながらも、いよいよ日常生活に支障をきたすレベルになってきた時に、初めて心療内科を受診しました。
けれどもろくに患者の顔を見ようともしない医師に、話しをほとんどすることもなく睡眠薬を処方されました。
薬で強制的に寝られるようになったものの、医師に信頼をおけなかったこと、強制的な睡眠が快適でなかったことなどから、数回で病院に行くことをやめてしまいました。

その後、一向に良くならない私の状態を心配して、友人が医師を紹介してくれました。
この先生は親身になって話を聞いてくれたこと、即効性はないものの細かく症状に合わせて処方される薬を出してもらえたことで、少しずつ改善していきました。
穏やかな回復は徐々に気力を回復し、体力を回復したことで根本的な問題に立ち向かうことができるようになり、回復することができました。

大切なのは、ひとりで溜め込まないこと

でも、家族や友人に心配をかけたくない、相談しにくいと言う気持ちもよくわかります。
そんな時はこんなサイトに頼ってみるのはどうでしょうか?

■厚生労働省 こころの耳

働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」

厚生労働省が行っているメンタルヘルスのポータルサイトです。
電話だけではなくメールでも相談できるので、気軽に相談できそうです。

他にも、職場や生活の悩みを相談できる無料のホットラインはいろいろあるので、活用してみてくださいね。

心の病気になると、人は絶望を感じ、もう回復できないのではないかという気持ちなります。けれどもそんなことはありません。
一度病気から回復した経験は、どこまでが自分の限界なのかを知ることができます。次からはそうなってしまわないように、何らかの対応をすればいいのです。
一番つらいのは自分の中で溜め込んでしまうこと。

信頼できる医師・友人・家族に相談したっていいんです。
問題の根本となっていることから一度離れたっていいんです。

そうやって身を守ることで、超えてはいけない一線を避けることができるのです。

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